下林のエンジニアブログ

効果的なサービス開発を目指すためのあれこれ

人が集まるボランティア組織をどうつくるのか を読んだ

ドラッカーのマネジメントを読んだときに「ボランティアをマネジメントするようにあるべき」という言葉が印象に残っていたのだけど、じゃあボランティアのマネジメントというのはどういうことなのかを知ったら視野がより広がるのではないかと思った。

読んでみて、ボランティアに限らず「やりがいのある仕事」の役にも立つ内容だと思った。

ここで言う「やりがいのある仕事」とは何だろうか? 一般的にWill, Can, Mustの3つが重なるコトをするのが良いとされている。 ここではWill=自分がやりたいこと、Can=自分ができること、Must=世の中に必要なこと=お金がもらえること、ということにする。 仮に仕事が主にCan, Mustに属するものとすると、ボランティアは主にWill, Canに属するものと見ることができる。 そして実際には、Mustの色も濃いボランティアがあれば、Willの色も濃い仕事がある。「やりがいのある仕事」とは、そうした仕事のことではないだろうか。

とすると「やりがいのある仕事」はボランティア的な側面を帯びており、ボランティア的なマネジメントが役に立つと考えられる。 読みながらそのように考え、自分にはとてもしっくりときた。

だから、人が集まる組織と集まらない組織の違いや、組織がフラットで民主的であるべき理由が現実味を持って理解出来た。 リーダーの持つ機能をパパ型とママ型に分類することもこれまでの自分と偶然に一致していて、より考えを深めることが出来た。

逆に後半のインタビューは個人的にはあまり興味が無かったが、自分のようなボランティアを実践したことのない人間がボランティアが実際にどのようなものなのかを知るための材料としては悪くないように感じた。

現実の仕事では、マネジメントの型をいくつか持って使い分けることが重要だと考える。 この本に書いてあるボランティア型のマネジメント以外にも、一般的に語られるトップダウン型のマネジメントや、相互利益になるような構造をつくりだす型のマネジメントがあるように思う。 どう使い分けるかを判断するヒントとして、例えば前述のような分類を自分の中で持っていくと良いのではないだろうか。

この本で学んだことを、そうしたひとつの型として活かしていきたい。

チームが機能するとはどういうことか を読んだ

チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ

チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ

を読んだ。

元々は最初に blog.shibayu36.org を読んで「気にはなるけど、まあ読まなくて良いか」と思ってスルーしていたところ、 blog.sushi.money を読んでちょうどこの頃は axe.hatenablog.com というようなことを考えていたので、ピクサーの手法のくだりが気になって読むことにした。結局ピクサーの話については引用されている分くらいしか書かれていなかったけど。

内容としては「世界の事業は個人の力では手に負えないほど高度化してきているので、チームで新しい分野に挑戦し続けることが企業の競争優位性につながる」「そのためには失敗から学習するためのチームづくりが不可欠」「そのための行為をチーミングと呼ぶ。チーミングするためにどうするべきか」といったことが書かれていたと思う。

この本を読んでいてとある銃乱射事件のことが思い浮かんでいた。うろ覚えだが、アメリカの優秀な学生が「もう世の中の偉業は過去の偉人にやりつくされてしまっている。今に生きる自分たちはもう偉人にはなれない。」といった論調で悲観して起こした事件だった気がする。検索して調べてもそのような事件は見つからなかったので、もしかしたら自分の記憶違いかも知れない(もし知っていたら思い出したいので教えて欲しい)。 交通インフラの整備やインターネットによってグローバル化が進み世界が縮小し続ける現在ある程度その考え方に共感せざるを得ないのだけど、この本の主張はそうした閉塞感に対する1つの答えであるようにも感じた。

Web業界においてもゼロ年代くらいまでは割りと「やったら大体何でも当たる」時代があって個人の思いつきとそれなりの技術力があればなんとかなっていたように感じているのだけど、最近はそうもいかなくなってきているように思う。なので、この本のような考え方が重要になっていくのではないかと考えている。

一方で、正直この本の日本語は冗長すぎてあまり良いとは言えない。 重要な主張は何度も繰り返し書かれているタイプの本なので、ざーっと流し読みする方が良さそうに思う。 そういった感触なので細かい記述についてはあまり思うところが無かったのだけど、ただこの本で言及されている「コンフォートゾーン」には陥ってしまいがちなのでちゃんと「ラーニングゾーン」に移れるよう責任を設定できているか自問していく必要があると感じた。

失敗から学ぶうんぬんについてはこの本で済ませてしまわずに失敗学の本を読んでみても良いかなと思った。 失敗という呼称がそもそも悪い気がしているのだけど、どう呼び替えるのが適切なのかは分からなかった。あるいは文中のようにミスと失敗を意識的に切り分けるようにすると良いのかもしれない。

失敗学のすすめ (講談社文庫)

失敗学のすすめ (講談社文庫)

元々興味のあったピクサーの話は普通にピクサーの本を読んだら良い気もしている。

ピクサー流 創造するちから

ピクサー流 創造するちから

というわけでこの本は「良いことが書いてあるとは思うが冗長」というのが自分の感想でした。 流し読みする分にはとても良い本だと思います。

効率的で課題解決的な態度にひそむ罠について

この記事は「はてなディレクターアドベントカレンダー」の18日目の記事として書かれました。

id:shimobayashiと申します。数年前からはてなという会社でディレクターという肩書で働いています。コードも書いてますけどね。 今回はディレクターアドベントカレンダーということで、マネージャー的な側面から表題の件について書いてみることにしました。

さて、一般的に効率的であることと課題解決的であることは良い態度とされていると思います。

実際にはこの2つが重なると、現在の課題についてのみ話すようになりがちです。なぜなら、効率的であろうとするほど話題を絞りがちですし、課題解決的であるほど課題について考えがちだからです。会議の場なんかでは顕著ですね。

そうなると「ここがうまくいってないよね」という会話しかせずに「ここはうまくいってるね」という会話はしなくなりがちです。そうした会話が続くと段々と自己肯定感が失われてきて、つらい気持ちになると思います。つらくなると、楽しくなくなって、自分がやっていることに自信が持てなくなり、次第に逃げ出したくなってきます。 つまり、精神的なコストが発生するということです。

マネージャーとして、クリティカルになるようなコストは排除したいと考えるのは自然なことでしょう。 そして、このような精神的コストは十分にクリティカルになり得ると個人的には感じています。

これが「ひそむ罠」です。

それではどうするべきなのでしょうか? 先ず基本的に、効率的であり課題解決的であることは歓迎されるべき態度であることに変わりはないと思います。 となると必要なのは、そうした態度の上で発生する精神的コストにケアすることではないでしょうか。 言い換えると、どのようなケアをするべきなのでしょうか?

正直この点について自分はあまり良い考えを持っていません。 短期では愚直に効率的で課題解決的な態度を取ることがコスパが最適だろうけど、中長期的にはおそらくそうではないというのが今回の気づきです。なので普段からバランスを取るように気をつけるという話にはなるのですが、「気をつける」というアクションプランほど無意味なものも無いと思います。

少しだけ掘り下げると、価値基準に「楽しさ」を加えるということが考えられます。要するにこの話は楽しさの問題なので、その点に気をつけていれば問題を避けられそうです。 「楽しさ」は意外と表面的なところでも改善できる要素なのかなと感じていて、例えばチャットでemojiをちょっと使ってみるだけでも楽しい雰囲気にはなりそうです。

そこからもう少し手を伸ばすと、例えば振り返りのKPTで時間を取って意識的にKeepを取り上げるといった取り組みも有効かもしれません。試しに最近そうしてみていますが、少し良くなった気がします。 あるいは、KPTはProblemやTryにフォーカスしがちなのでもっと他のフレームワークを試してみるのも良いかもしれません。YWTまたやりたいと思うことを5つリストアップするなど、色々やりようはありそうです。 一般社会ではお祭りを定期的にやって盛り上がってるわけで、ああいう感じをもっとうまく取り入れられないかとぼんやり思うこともあります。

他にはどんなケアが考えられるでしょうか?ぜひ色んな方の意見を聞きたいところです。

プロフェッショナルは自己批判的であるものだと考えていますが、それでも人間なのでつらいものはつらいです。 本質的に癒やしや自信を与えてくれるのは過去の圧倒的な成功体験だと思っていますが、若いメンバーの集まる会社だと自分も含めてそうした体験を持っていないことが多いので難しいなあと感じています。

こちらからは以上です。 明日はid:shiba_yu36のエントリーをお楽しみにどうぞ。

いちばんやさしいグロースハックの教本 を読んだ

LEAN ANALYTICSを読んで物足りなかったので、あえてバズワードという切り口で参考書を探したらどうだろうか?と思いグロースハックという単語で探してみたところ、

この本が見つかった。 グロースハックというと登録フォームまみれになったりしてユーザー体験を破壊するようなイメージがあり印象が悪かったが、レビューなどを読む限り自分が求めているものに近そうだったので読んでみることにした。

そして読んでみて、自分が読みたかった本そのものだと感じた。良い本です。

まず、順序立てて何が大事なのかというところからブレイクダウンして教えてくれるので理解がしやすい。ブレイクダウンの粒度も、荒すぎず細かすぎないと思う。 そして実際のプロダクトの話をほどほどに絡めて書いてあるので現実的な実施のイメージも立てやすい。

本が薄いのも良い。こういう本はチームでサクッと読んで共通認識を持てるとやりやすいので、薄ければ薄いほど良い。 本気で読めば4時間程度で読めるボリュームだと思う。

論調としてもユーザー体験を破壊するような流れにはなっていなくて、安心して読むことができた。 むしろ普通かつ今風にウェブサービスの成長を考えたらこうなりますよねという内容なので、あまり「グロースハック!」って肩肘張らずに読むと良い本だと感じる。

プロダクトのステージを分けて、たとえば継続率50%を超えたら次のステージに行きましょう、継続率はこうやって分解してアプローチしていきましょう、みたいな話はまさに自分が欲しかった見地だった。愚直に採用するべきではないと思う一方で、議論のスタートラインとなるようなポジションになり得るのでとても便利に思う。

「すでにユーザーがいるところを狙う」みたいな発想も自分はあまり意識できていなかった点で、自分の考えを整理してくれるだけでなく広く浅く補ってくれてもいる。

オレオレフレームワークが出てくる点はオヤッと思わなくもないけど、まあそうしたい気持ちも分かる。 実際自分もAARRRの罠みたいなところにはハマっていた気がしていて、順序をきちんと意識するのは大事。 現場でそのまま使おうとするとあまりにもカブれてる感じが出すぎて引かれる気がするので、必要に応じて既存のPDCAとかAARRRを使いつつ本書の戒めも気にすると良いのではないか。大事なポイントを押さえているけど、それくらいで良い印象。

というわけで、プロダクトの成長についていい感じにまとまっているので良い本だと思いました。 他にもこういう感じの本があったら読んでみたい。

LEAN ANALYTICS を読んだ

企画・分析系の知識をもっとつけたいと思ってとりあえず読むことにした。

Lean Analytics ―スタートアップのためのデータ解析と活用法 (THE LEAN SERIES)

Lean Analytics ―スタートアップのためのデータ解析と活用法 (THE LEAN SERIES)

  • 作者: アリステア・クロール,ベンジャミン・ヨスコビッツ,林千晶,エリック・リース,角征典
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2015/01/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (4件) を見る

読んだ人いわく「記憶に残ってない」とのことだったのであまり期待はしていなかった。 なのでどちらかというと巻末の参考書籍を辿りたいと思っていた部分も大きい。

感想としては、一通りのことは書いてあるんだけど頭にしっかり入ってこなかった。

僕はUGCサイトについて主に知りたかったんだけど、複数のモデルを紹介しているせいか割かれているページ数がとても少ない。 なので結構上っ面っぽいことしか書いてなくて、本当はもっとブレイクダウンした話を読みたかった。 UGCサイトに限らないにせよ、施策レベルの成長モデルの組み立て方とかをもっと具体的に学習したかった。 内容が全体的にRUNNING LEANと被っていた気もする。RUNNING LEANは結構好きな本なんですけどね。

Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)

Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)

  • 作者: アッシュ・マウリャ,渡辺千賀,エリック・リース,角征典
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2012/12/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 3人 クリック: 14回
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「基準値がないときに何をすべきか」の項は自分が直面していることもあって参考にはなったんだけど、そこも2ページしかなかった。

参考書籍コーナーもビジネスモデルの本とか比較的メタなやつばかりで僕が読みたい話が載っていそうな本は無さそうだった。 もしかしたらそうした本自体が無いのかもしれない。

というわけで、別に悪い本じゃない気がするんだけどあまり収穫は無かった。

ほかの人に参考資料として

type.jp

とかを教えてもらったけど、こっちのほうがまだ参考になった気がする。 「記憶に残ってない」と言っていたワケが分かったという結果だった。

暗号技術入門 を読んだ

買ってからずっと放置していたのをようやく読んだ。

新版暗号技術入門 秘密の国のアリス

新版暗号技術入門 秘密の国のアリス

元々は公開鍵がどうとかSSLのサーバー証明書がどうとか良く分からないままに利用はしていて気持ちが悪かったので勉強したいと思ったのが発端だった。知っとけよという感じではある。

そして、そんな初学者にはとても良い本だった。 とっつきづらそうだけど読み始めたら結構止まらなかったのでもっと早く読めば良かった。

暗号学者の道具箱ということで6つの要素(対称暗号、公開鍵暗号、一方向ハッシュ関数、メッセージ認証コード、デジタル署名、擬似乱数生成器)を紹介し、ボトムアップで最終的にはSSL/TLSの説明などに入っていって理解がしやすかった。 何も知らなかったので概観を掴むにあたってもどんなことを知ればいいのやらという感じだったけど、こうした構成がうまくできていて恐れなくスムーズに読み進めることができた。

そもそも近代的な暗号の歴史自体がそれほど長くなくて発展途上であることも感じ取れた。 自分には数学的素養が無いのであまりきちんとは理解できていないけど、概観を掴むことはできたと思う。 全体的にパズルっぽくて面白かった。

暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス

暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス

僕が買ったのは新版(2版)だったけど気づいたら3版が出ていたので、これから読もうとする人は当然新しい方を買ったほうが良いと思う。

難易度的には一般的な情報工学系の学生でも普通に読めそうで、この手の知識が無ければ有用な内容だと思うので、とりあえず読んでおいたら良さそう。

いわゆるエンジニアブログをつくってみた

ブログを書くという活動自体は10年以上やっていて、正直ブログを分けることに対しては否定的だった。 というのも、何だか不誠実な気がするし、見せたい内容に応じてブログを使い分けるというのは前時代的な感じがしてインターネットという新しいメディアにそぐわないと思っていたからだ。

とはいえ実際問題、僕のメインブログを見れば分かるようにスゲーどうでもいい記事で溢れかえってるし(それ自体はネットでしかできない非常に有意義なことだと思っている)、 最近は伝えたいテーマを絞ったブログをつくったらこれはこれで書きやすいなと感じ、いっちょやってみるかと思った次第である。

まあ正直な話をすると、

SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル

SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル

を読んでいけすかねーと思いつつセルフブランディングに成功している人たちがウェブ系では目につくし、諦めて自分もそうした方が良いのかなと思った部分も大きい。 ありのままの自分を見て欲しいというのは若さでしか無かった。

そんな若干不純さもある動機でつくったブログなのでどれくらい続くか分からないが、それらしいことを書いていけたらと思っている。